sakiusanekoのブログ

バイオリンの先生です。

私がスタバを信じる理由

私には子供が二人いる。現在、高校生の息子と小学生の娘。

 

息子の方は、小学生の時に発達障害ASD(自閉症スペクトラム症候群)のグレーと診断されている。

 

その診断を受ける数ヶ月前の出来事。

登校中、同級生に向けて泥だらけの傘を振り回し、その子が着ていたジャンパーに泥を付けたとして私と息子は校長室に呼び出された。

お昼休みの時間、校長室には校長と教頭、そして担任と学年主任。

息子も到着し、私と息子は4人の教員からずっと責め立てられるような状況だった。

それ以前からも息子は同級生に度々暴言や暴力を振るい、その度に謝罪に駆け回っていた私は精神的にすでにボロボロの状態ではあったが、その校長室での話し合いで完全に参ってしまった。

 

その日の夕方、息子が帰宅し、息子と一緒にジャンパーの持ち主の家へ謝罪に行き、ジャンパーをクリーニング店へ出しに行き……

 

夕飯を作る気力もなくなり部屋でぼーっと放心していた。

これまでの私の人生で、こんなにどうにも解決の仕方がわからない困難に当たったことはなかったと思う。子育てとはなんと儘ならぬものか。

こんなことを何度も何度も繰り返して、死にたいと思った。息子と一緒に死にたい。でも、下の娘はまだ幼稚園にも行かない赤ちゃんで、まだまだ私がいないと生きていけないだろう、その気持ちだけで死ぬのを我慢している状態だった。

 

そうだ、スタバに行こう。非日常のオシャレな空間で温かいカフェモカを飲んで、今日のことはとりあえず一旦忘れよう。息子もスタバのキッズココアは大好きだし、娘もスタバでリンゴジュースを飲むのが好きだ。そうだ、スタバへ行こう。

 

私は、車でスタバへ行った。夕方6時位のスタバは、郊外の店舗なのにそこそこ混み合っていて、一つだけ空いていた二人がけのテーブルに娘用の子供椅子を引っ張ってきて座らせた。

息子が自分でココアを運びたいというので見ていたら、座席に座る瞬間、ココアを倒してバシャーっとこぼしてしまった。

混み合う店内、私は周囲への申し訳無さから少し大きな声で「何やってるの!」と息子を叱った。息子もこぼしてしまった事と私に叱られていること、そしてココアがなくなってしまったことで悲しくて大泣きしている。他のお客さんたちが遠巻きに見つめる中、私達親子だけが地獄絵図のようになっていた。持参していたタオルで拭くも間に合わず、床にぼとぼと落ちるココアを紙ナプキンでどうにかしようとワタワタ動いていたら、タオルと雑巾を持った店員さんが素早く駆け寄ってきた。

「スミマセン!本当に、ごめんなさい!!」と繰り返す私に店員さんが「大丈夫ですよ〜」と言ってくれた。

泣きじゃくる息子に「熱くなかった?」と、息子にかかったココアを拭きながら優しい声で話しかけてくれた。「大丈夫だよ〜また新しいの作ってくるから安心して待っててね〜、ボクは全然悪くないよ〜きっと蓋が緩かったんだね〜ごめんね〜」と。

私には「キッズココアは温度をかなり低めにお作りしているので火傷はしていないと思いますが、ビックリさせちゃったみたいですね。お店に迷惑とかも全くないので、大丈夫なので、どうか叱らないであげてください。今すぐ新しいのお作りしますね、もちろん代金はいりませんからー」と。素早く汚れた箇所を原状復帰して去って行った。

 

私は、気づいたら泣いていた。

ついさっきまで息子のことで沢山の人から責め立てられていた反動で、スタバ店員さんの優しい言葉が心に染みすぎて、どうしても涙を止めることができなかった。多くのお客さんがいてとても恥ずかしかったけど、ココアを持ってきてくれた店員さんもびっくりしたかもしれないけど。なんか大げさにシクシク泣いてる私を見て、「子育て、大変ですよね。リラックスしたくなったら、いつでも来てくださいね」と声をかけてくれた。私は泣きながらお礼を言う事しかできなかった。

 

私はこの日から、スタバ教の信者になった。

 

息子はその後、小学校5年生あたりから学校でのトラブルはパタリとなくなった。そして今、部活動推薦でなんとか入った高校の吹奏楽部で素敵な仲間たちと出会い、サックスの練習に邁進する日々。

学校の帰りに時々部活の友達と駅のスタバに寄るのが彼のご褒美らしい。